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September 1, 2014

2014.09.01

「セラピスト」 最相葉月

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「セラピスト」最相葉月

「あなたもこの世界を取材なさるなら、自分のことを知らなきゃならないわね」

著者は、最初に木村晴子にそう言われたと言う。木村晴子とは、
河合隼雄の箱庭療法をいち早く自分のテーマに取り入れたカウンセラーである。


カウンセリングの勉強をしていると、
「自分のことを知らないといけない」
「他人を理解したいと思うなら自分を理解することが大切」と言われる。
だから、カウンセラーを目指している人や
プロのカウンセラーも教育分析やスーパーバイジングに通い続ける。

それは「人を救いたい」という気持ちの危うさに気づかなければいけないと
いうことだと思う。
「救いたい」と言う気持ちが、クライアントを自分の思うように
導きたいという気持ちに結びつくこともある、
そのことに気づくためにも
「自分を知る」事が重要なのだと思う。


著者は心理学の世界の取材を続けながら
心理学の大学院に通ったり、民間の研修期間で3年間の課程も修了する。
事例研究会やケース研究会にも出席している。


そして、様々なセラピストと出会い、
著者自身がクライアントとなり、セラピーを体験し
自分と向き合っていく。

「箱庭療法」「絵画療法」などに取り組むのだが、
精神科医の中井久夫に絵画療法によるカウンセリングを受けた際の
逐語録はとても興味深い。

そして、最終的には自分がある精神疾患にかかっていると
知ることになるのだ。

きっと著者はそこまで自分をさらけ出すことになるとは
思いもよらなかったのではないか?
心理学について、セラピストについて取材を始めて
そこに到達してしまったことを、どう感じているのだろうか。
そこまで自分を知ることで、何かが
著者の中でも変わったかもしれない。


第9章の「回復の悲しみ」では、河合俊雄の
次のような言葉が印象に残る。

「人が回復するときのかなしみというのは、僧の大きな鼻が小さくなってしまったときの、
なんともいえぬさみしい気持ちと似ているのではないかと思うのです。
たとえば、これまで乗れなかった乗り物に乗れるようになることもそうです。
いいことではあるけれど大事なものを失ってしまったような・・・・。
人が変わるって命がけなんです。時には怒りにもなる。
あいつのせいで変わった、といって治療者を殺しに行った人もいますから」

人が変わることはそれほど大変なこと。

私自身は、カウンセラーと言ってもメンタルではなく
キャリアなので、そこまで重い症状のクライアントに関わることは少ない。

それでも「自分が試されている」と感じることがある。

人と向き合い、援助する仕事の奥深さと難しさを
また改めて感じることが出来る素晴らしい本でした。


追記(9/2)

第8章 「悩めない病」も興味深かった。

甲南大学カウンセリングセンターを訪ね、
学生相談室の専任カウンセラー、高石恭子を取材している。

最近学生は、内面を表現する力が確実に落ちていること、
何に悩んでいるのか、葛藤が何なのかがわからない、
主体的に悩めない、感情が分化していない。
悩むためには言葉やイメージが必要だがそれがない、等について
触れている。

また今の学生には「巣立てない」という悩みや、
発達障害やその傾向を持つ学生達の増加などもある。

私が普段仕事の中で感じていることに通じるものがあり
この本を手に取った多くの人たちが、現代の若者を理解する
一助になるのではと感じた。

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