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2014.07.20

「承認をめぐる病」 斎藤環


Syouninn_3

毎日大学生と接していると、いじめられた経験の影響力やコミュニケーションの問題を感じることがよくあります。

私と大学生と年の差は30歳近く。先日高校時代の卒業30周年同窓会があり、30年ぶりの友人達と再会して「変わらないね」と言い合ったのですが、それはお互い同時に年を重ねているから。大学生から見たら「お姉さん世代」どころか「母親世代」であるわけで。一昨年担当し、卒業後もたまにランチをする女の子と話していたら、お母さんは私よりも年下でした!衝撃・・・(笑)

この本「承認をめぐる病」を手に取ったのは、同じ著者の「母は娘の人生を支配する」という本が面白かったからと、「他者からの承認」「自分で自分を認めること」について考えていたから。何気なく読み始めましたが、約30歳年が離れた若者を支援する為にとても勉強になりました。

精神科医である著者が、連載や書き下ろし以外で書いた精神医学とその周辺の原稿をまとめたものなので、重複している内容もあり読みにくい所もあります。しかし、前半「思春期解剖学」に収められた、「若者と文化と思春期」「若者気分とうつ病をめぐって」「『良い子』の挫折とひきこもり」「サブカルチャー/ネットとの付き合い方」「子どもから親への家庭内暴力」「秋葉原事件~三年後の考察」あたりが特に面白く、今の若者が育ってきた環境を理解する助けとなりました。

コミュニケーションスキルについて少しばかり勉強し、研修もしている身としては、「若者と文化と思春期」を読み、若者が言うところの「コミュ力」と自分の考える「コミュニケーション力」に大きな違いがあることに驚きました。

「コミュ力」とは「場の『空気が読め』て『笑いが取れ』るような才覚」のこと(P18)。そして、スクールカーストの序列を決定づけるもの。スクールカーストとは、衝撃的な表現ですが、「教室内身分制」のこと。教室間に複数存在するグループ(同質集団)は、はっきりした上下関係があり極端な場合、個々の生徒たちはグループを超えて交流することはまずない。(P17)「キャラ」という「グループ内での立位置を示す役割」は同質集団の中でなされることが多い(P18)そうで、「キャラ」理解のために、AKB48のシステムを例にあげ解説しています。

「キャラ」文化は「コミュニケーションの円滑化」に最大のメリットであり、「コミュ力」によってスクールカーストのどこに位置づけられるのかが決まる、子供達の間では、大きな対人評価軸となっているとのこと。「コミュ力」は、必ずしも適切な自己主張とか、議論・説得の技術ではなく「場の空気を読む力」と「笑いを取る能力」で、「キャラ」を忠実に演じ続けることで、人格的な成長や成熟が抑えこまれてしまうことを著者は問題にしています。(P22)たまたまカースト下位集団に所属してしまうと、その後の人生でそのキャラを脱ぎ捨てることが難しくなってしまうというのです。

子どもにとって世界の全てであると感じられる学校。その学校生活の中で、たまたまスクールカースト下位集団に所属し「キャラ」を割り当てられると、そこから脱していくことが難しくなる。「キャラ意識」が「自分は成長していくことが出来る」という実感を阻んでしまっているとしたら、彼ら彼女らがその経験を忘れることが出来ず、得てして「どうせ自分は」と投げやりになる理由もわかります。

20歳そこそこで、自分を否定し、成長意欲や前向きな姿勢を持てなくなっている理由を、彼らが生きている世界を知ることで少しでも理解したいと思います。

「良い子の挫折とひきこもり」の中に、「条件付の承認」の問題についても触れられています。無条件に愛するのではなく「良い子にしていれば」「成績が良ければ」という条件つきで子どもを肯定し、愛し続けると、親の期待という極めて曖昧なハードルが、常に子どもの現状より高いレベルに設定され続けるため、「これでよい」という判断はほぼありえない。そのため子供は一定の達成感を得られず苦しむ。(P68要約)「良い子」が家族以外の他者と関係を作っていく思春期と、他者との関わりについて延べられており、引きこもり支援にも関わる、著者ならではの視点を知ることが出来ます。

思春期の子どもを持つ人や、若年者支援の仕事をする方に、お勧めの一冊です。

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