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February 24, 2012

2012.02.24

「センセイの鞄」 川上弘美

ここ最近、エッセイなどを読むことが多く、小説は余り読んでいませんでした。

今年の年初に「人間の心を理解するのに、小説をもっと読みたい!」と思っていました。
図書館に行くと、目にとまった小説を借りてくるようになったのですが
「センセイの鞄 」は、久々に、こころを揺さぶられた本です。

通勤の時に読んでいて、ラストシーンは朝の通勤バスの中で読んでしまいました。
「まずい、どうしよう、涙が出ちゃうよ・・朝から・・」と思いながらも読んでしまって
アイメークが悲惨なことになってしまったほど。

30歳以上年の離れた、高校時代の国語の先生と再会した、アラフォーのツキコさん。
ツキコさんは仕事もそこそこ頑張っているし、家は兄夫婦と母と甥がいて
居心地が余りよくないから、1人で暮らしている。

通勤帰りに駅前の一杯飲み屋に寄るようになり、
そこで先生と再会した。と言っても、ツキコさんは高校時代のセンセイのことを
余り記憶していない。でも先生はアルバムでツキコさんを確認していたみたいで。
ちょくちょく一緒に飲んだり、2軒目、3軒目まで行ったり、
センセイの家で最後の1杯をしめくくるようになったりする。

ツキコさんには恋人がいたことだってあるし、本当はずいぶん好きだった
その恋人が自分の友人と結婚してしまったということもあった。

センセイと再会してからは、一緒に市に出かけたり、花見やキノコ狩りに出かけたりした。
野球の贔屓のチームのことで、喧嘩になって何日も口をきかなかったりしたこともある。
お互いに、相手が親しげな異性と話をしているのを見て、モヤモヤとしたりもする。

1人暮らしのツキコさんが、蛍光灯を取り変えようとして失敗し
割れた蛍光灯で足を切り、めまいを起こして寝ていた真冬の夕暮れ、
心細くて、寒くていつもの道がいつもと違う道に思える駅までの道を歩きながら

「センセイ、とつぶやいた。センセイ、帰り道がわかりません。
しかし、センセイはいなかった。この夜の、どこに、センセイはいるのだろう。
そういえば、センセイに電話したことが、なかった。いつも、ふと会って、ふと一緒に歩いた。ふと訪ねて、ふと一緒に酒を飲んだ。ひと月も話さない、会わないこともあった。かつて恋人とひと月も電話をしなければ、会わなければ、心配でしかたなかった。会わない間に恋人はかき消したようにいなくなってしまうのではないか。見知らぬものになってしまうのではないか。

センセイとは、さほど頻繁に会わない。恋人でもないのだから、それが道理だ。会わないときも、センセイは遠くならない。センセイはいつだってセンセイだ。
この夜のどこかに必ずいる。」(P94)


センセイと島に行き、過去に出奔してその島で亡くなった奥さんのことを知る。
ツキコさんは、高校時代の同級生、小島孝とちょとだけ付き合って見る。
でもセンセイと会っている時には、感じない違和感を、小島と会っていると感じる。

美術館に行った帰りの公園で

「ツキコさん、ワタクシはいったいあと、どのぐらい生きられるのでしょう」
と突然聞いた。「ずっと、ずっとです。」私は反射的に叫んだ。(P248)

と始まるシーンが、とっても切なくて好き。shine

最後にセンセイが亡くなってしまうシーンは描かれていない。
センセイはツキコさんに鞄を残していってくれた。

ラストシーンは想像していたのに、やっぱり泣けてしまったのでした。weep


図書館で借りた本だけれど、何度も読み返したくなってしまったので
買おうかなと思っています。
そう思って本屋さんに行ったら、
「パレード 」という「センセイの鞄」から生まれ出たもうひとつの物語、という文庫本を発見。
ツキコさんとセンセイのある夏の日の物語。

ツキコさんがセンセイに、自分の小学生の時の話をしていて
それでひとつの物語になっているのでした。


川上弘美さんの本、他にも読んでみようと思います。

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